旅メシダイアリー

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料理の記憶 〜サインの歴史〜

すすきのラーメン横丁のお店で食べたことがある人は、有名人のサイン色紙がびっしりと壁に貼ってるのを覚えているだろうか。

私の働く天鳳にも有名人が数多く来ていて、年数の古い事により油やタバコのヤニで色あせた物もある。書いた人の中にはすでに亡くなった方もいるだろう。

 

 

好きな人から見れば宝の宝庫という事になるだろうし、ある意味では札幌観光の代名詞を決定づける看板となっている。

例えばラーメン横丁に新規オープンしてどれだけ現代風にオシャレを気取ってもサイン色紙が大して貼られていなければ、どうも味気なく感じてしまう。

 

 

食べに来たお客さんも

「おお~あれあの人だ。」とか「何書いているかよくわからんな。」などと色紙を楽しむ声が聞こえていた。

 

 しかし、そんな中にも頭を抱えてしまうような問題もあったりする。

 それは、サイン書きたがりの人で自分は有名人だと言って、サインを書いてあげる。などと自己アピール満載の人が多数いた。

 

たとえ店主がその人を知らなくても、ただ知らないだけで人気有名人かもしれない。ということがあるため、決して断りはせず一応書いてもらう事にしてると言っていた。

そんな中、やたらと体格のいい男性が2人やってきた。

 ラーメンを注文したあと、一人の男が店主に「マスター。この人知ってるかい?」と隣の男を指して一言。

 

「え?」

 

 「今日、初めて札幌に来たんだけどさ、テレビで見たことないかい?」

 

 

「う~ん・・・・。どこかで見たような・・・。」

 

 

「マスター。プロレス見るかい?」

 

 「はあ。たまに・・プロレスラーの方ですか?」

 

 「ガタイ見たらわかるだろ~。」

 

「おい。よせって。いいよ~。」と、もう一人の男

 

 「そういえば・・・この間、試合に出てたような・・・」

 

 

「結構強いんだよ~。彼。」

 

「試合もバンバン出てるよ。」

 

「そうでしたか。ちょっと思い出せないですが、すみません。」

 

 「まあいいよ。ほら!サイン書いてもらいなよ。」

 

 「あっ!そうですね。お願いします。」

 

 お店に常備してある色紙をとり出す。

私は誰なんだかさっぱりわからない。プロレスをほとんど見ていないけれど、当時と言えば向かいお店に長州力が来たとか、藤波辰巳との写真が飾ってあるなど、超有名なプロレスラーも当たり前のように来ていた。

 


「実は彼ね...」

 



 

「覆面レスラーのブラックタイガーなんだよ。」

 



 

覆面レスラーかい!

 

 

 しかもブラックタイガーって何だ?

エビ?エビの事か!?

 

私の脳裏には黒い縞模様のマスクにヒゲが生えているのを想像してしまう。ただでさえプロレスラーを知らないのにマスク無しで言われても...と、とっさに色々なツッコミが出てくるが、声には出さなかった。

 

 そして

自称ブラックタイガーはさらさらっとカタカナで「ブラックタイガー」とサイン。怪しすぎるサインが出来上がった。

ラーメン横丁にはそんな色紙がずらりと壁中に張られていると思うと、少し悲しくなった。

 

そんな中、天鳳に奇跡が起きた!!

私が働く少し前、天鳳では一大ニュースがあった。それは、当時人気絶頂だったグループ「B'z」の稲葉さんがプロモーション撮影をしたいと事務所から連絡があり、ラーメン横丁の中でも「天鳳」が選ばれたのだ。

曲名は「love me, l love you 」で当時CDを出せば必ずオリコン1位になっていたから、幅広い層にファンがいる。

その稲葉さんにサインをお願いしたところ、快く書いてもらえた。

偶然その色紙をみたファンが雄たけびをあげた!「キャー!!!稲葉さんだー!!」

 店主は雄叫びに驚き

「どうしたんだい?そんなに興奮して?そんなに好きなのかい?」


話を聞いたところ当時、稲葉さんはサインを書かない人で有名だったらしく、ファンの中でも雑誌で見るくらいで実物に出会えたことに感動しているようだ。

 

「このサイン、写真撮ってもいいですか?」

 

 「もちろんいいよ。」

 

 

 使い捨てカメラ「写るんです」で何枚も撮る女性。その姿をみた店主は、「こりゃ宣伝になるな。大事にしなきゃ。」

 

厨房から取り出したサランラップで綺麗にコーティングし通りがかりでも見えるようにと、入り口に張って置いた。

 

ブラックタイガーはえらい違いだ。

 

 インターネットも普及していない時代に、その話題はファンクラブを通し、南は九州、北は稚内まで日本全国からその色紙を一目見ようと、ファン達が押し寄せるようになった。

しかし、ファン達は入り口から写真を撮るだけで、肝心のラーメンは食べていかない人がほとんどだった。

私はそれを見かねて「ひどいですね~。食べていかないなんて」と店主に言うと店主は一言。

 「いいんじゃない。ふふふ。」

 ほとんどのファンが若い女性。店主はちょっと顔が緩んでいた。その後、店主は何かに気づいたように「よし!もっと宣伝しよう!誰でもわかるように。」

そこでまた厨房から取り出したのが黒いマッキー。

 「え?まさか!?!?!??」

 

「ラップの上からだからいいだろ。」

 

「え~~~~~~~~~~~~~~!!」

 


「ビーズ」

 と

 

 決して綺麗とは言えない字でラップの上に店主が書いてしまった。

こうして稲葉さんと店主のコラボサインが出来上がった。 知ってか知らずかその後もファン達はそのコラボ色紙を無数に写真に収めていった。

 

 当時の写真を持っている方ご一報下さい。

 

 

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